タイトルを見て「この2人の相関性って何?」と思った人もいるかも知れません。
前者はフェアトレードとファッションビジネスを結びつけた社会起業家。
後者はご存知、大原美術館を作ったり岡山県倉敷地区を中心に日本で先駆けて社会貢献活動を進めた実業家です。
時代的には接点があるはずがありません…。
私は常々、
企業は社会貢献できてナンボ
と考えていますので、利益至上主義の会社にはあまり関心がいきません。
CSRが注目されて10年近く経ちますが、組織がいかに地元社会に良い影響を与えるかと考えると、時代は違えど、この2人の生き様には今の組織運営のあり方を照らすお手本のようなものを感じるわけです。
サフィア・ミニー氏はフェアトレードショップ・ピープル・ツリーの代表を務めるイギリスの女性起業家。
バブル経済全盛時の好況下に来日して、六本木の豪遊者を見ながら日本社会の矛盾に疑問を感じたそうです。
さらに日本にはオーガニックフードやエコロジー製品を買えるショップがほとんどないという現状にも驚かされたそうで、貧困な国の生産者にも何とか対価の報酬が得られるようなフェアトレードの仕組みを作りたいと国際貢献活動に興味を持ったようです。
そこでチョコやコーヒーといったトレードじゃなく衣料品に着目したのですが、上出リンクの本はサフィアさんの自叙伝と言ってもいい本で読めばとても痛快です。
利益を煽るだけのビジネスは社会に多くの富は残せないということに気づいたのでしょうね。
ちょっと既存の大企業は「悪」、NGO活動は「善」という色分けがキツいと感じる人には読みづらいと思うのですが、衣料品のフェアトレードショップが軌道に乗ってイギリスから叙勲の表彰を受けたそうなので、まさに女性社会起業家のサクセスストーリーとして読める本だと感じました。
で、続いて大原孫三郎氏の話に移りたいと思います。
倉敷の富豪の家に生まれながら放蕩生活を送っていた大原は父の跡を継いで1906年に26歳の若さでクラボウの社長に就任します。
社長になった大原は従業員の粗悪な労働環境に頭を痛め、当時の企業では先駆けて「福利厚生」という概念を経営に適用していきます。
当時の利益主義に走った重役たちから反対を受けながらも、「社員の幸福なくして事業の反映はない」と悟り、奴隷小屋のような寄宿舎や飯場を廃止して社員住宅を充実させたり、学校を出ていない職工のために工場内に補修学校を作り社員の待遇も改善していったのです。
大原は若い頃、友人の影響を受けてクリスチャンに改心していきます。
その後、特に二宮尊徳の「儲けの何割かを社会に還元する」という報徳の考えに感銘を受け、自らの日記にも
余の天職のために財産を与えられた。
神のために遣い尽くすか、利用すべきである。
と思いを書き連ねました。
地方の一紡績工場を日本を代表する大企業に成長させ、労働災害の改善を願って設立した倉敷中央病院の利用も工員にとどまらず、市民に開放していったのです。
倉敷市には病院や学校や美術館だけでなく、大原の利益を社会に還元するという思想から作られた施設が今もたくさん残っています。
大原はそういった数々の事業展開を反対された時に、常に重役たちにこう言い切ったそうです。
「ワシの眼は10年先が見える。」
サフィアさんと大原氏の2人の考え方に、ステークホルダーと企業の関わり方の典型を見たような気がします。
幹部の保身が根強い企業体質に一石を投じるビジネススタイルといっても過言じゃないでしょう。
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